2022年最初の読書会の課題図書はこちら。
副題として「5%の『考える消費』が社会を変える」とついています。
著者は東京大学・宇宙研究所(現JAXA)を経てゴールドマン・サックス証券に入社し、その後ベンチャーキャピタルの会社を起業したという人です。
私より1周り若い40代前半のバリバリな方です。
どんな本か。
「はじめに」で
既存の資本主義の功罪を理解し、新しい資本主義(サステナブル資本主義)の形を求めていくことが必要 (中略) ・・・で、国、企業、スタートアップ、個人それぞれでどうすれば実現可能かその道筋をまとめました。
と言って6つの章で詳しく述べています。
序章:現在”金余り”状態にあるにもかかわらず、「持続的な社会」が息詰まる、という現状について考察。
1章:既存の資本主義による「冨」のメカニズムについて解説。結局冨は一部に集中し格差が大きくなっていくのが今の資本主義のルール、ということです。
2章:地球全体を1つの会社にみたてて、「社会的コスト」について提言しています。
3章:持続可能な社会を実現するためには「投資家」だけでは力不足で、「消費者」こそが鍵を握っている、ということを著者の意見として提起しています。
4章:我々が直面している「人口減少」「高齢化社会」「国際紛争」「エネルギー」「環境」「食糧」「貧困」という大きな社会問題に対しての取り組み方について、著者が提言をしています。これらの社会問題が既存の資本主義の影響を受けている側面があることにも触れています。
5章:日本が新たな資本主義を実現する可能性について言及しています。
失われた30年と言われ、いろいろな環境から取り残されているような話をネットやメディアを通じて目に耳にしますが、著者は「それでもこれから持続可能な社会を形成するに当たって世界のリーダーになりうる」ポテンシャルが十分ある、という前向きな姿勢を見せてくれています。
中に書かれていることはたくさん議論の余地があるのは著者自身百も承知で、まず「5%」が動くことで社会全体の仕組みをかえていくことが十分可能だ、そしてそのキーは「消費者」である我々にある、と主張しています。
5%の数字自体の是非を問うことはあまり意味がないのですが、小さなうねりをまず作りましょう、という提案は耳を傾ける価値を感じます。
この本から得られるキーは乱暴な表現を使うと、
- 「安さ」だけを求めず、必要な対価を払おう
- 地球資源、社会への影響といったことを「社会的コスト」として評価軸に織り込もう
ということかな、というのが私の解釈でした。
1は著者のいう「投資家マインドを持った消費者」になろう、という提案です。
その価格で、受けるサービスに関わった人たちがちゃんと必要な経費をまかない、”相応の”利益を享受できるようになっているのか。
そんなことを意識してみようということです。
2は、古くは公害対策もせずに事業をしていてよかったのか、とか、今で言えば二酸化炭素をそんなに吐き出していいのか、とか、身近でいえば、夜もねれないくらいの騒音を出し続けて事業してもいいのか、とか。。。
もっと乱暴にいえば、人に迷惑をさんざんかけても儲かればいいの?という問いかけです。
でも今の資本主義のルールは「Yes」なんです。
それは違うよね、何かルールがおかしんじゃない?というのが著者の提言。
ただ「サステイナブル資本主義」と、今の資本主義のルールを変えるような印象を与えるタイトルになっていますが、今の資本主義ルールをどう変えるべきかということについては、ほとんど触れられない、という印象です。
むしろ、「これから儲ける領域はSDG'sですよ。そこで消費しましょう」という投資家目線の誘導ではないか、とうがった見方をすることも可能かも。
本のタイトルから「これからの資本主義に変わるルールの提案」と期待してしまうと、ちょっと残念な内容になりますが、自分たちが今できる行動としての目線をつける、という意味では参考になるかもしれません。
個人的には1章で登場したピケティの「資本成長率(r)は経済成長率(g)を上回る」
r>g
という方程式がやっと合点がいったのが大きな収穫でした^^;;
「資本成長率(r)は経済成長率(g)を上回る」ってどういうことか。
資本は資本家、すなわちお金を持っている人の価値です。
経済は、資本家のお金を使って作られた価値、すなわち労働によって得られた価値です。
労働によって得られた価値(例えば給料)よりも資本家に入ってくる価値の方が成長していく、ということを言ってます。
すなわち「お金を持っている人にお金が集まる」ことで、今の格差拡大という問題点を端的に表現した式なんです。
8年前に発表された「21世紀の資本」という本が世界中でセンセーションを起こしたのですが、邦訳で728ページもある専門書はとても私が敵う相手ではなく、よくわからないまま過ごしていました(お恥ずかしい・・・)
実は映画にもなっていたらしい(^^)
有料だけど観てみよう(^^)