48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜共感革命

 

今回の課題図書はこちら、「共感革命」。

 

人類は「共感」することからコミュニケーションをとるようになり、やがて世界を作り生物の頂点にたったが、この「共感」の”暴走”によって世界を壊している、と指摘。そのきっかけは「定住」にあるとして、もっと「遊動」することで世界がよりよくなることを期待している、とまとめた本です。

 

「共感」というところが、人類にとって”武器”ある一方、”凶器”にもなってしまったという視点はとてもおもしろく感じました。

 

人類は「言葉をつかうようになって社会をつくりあげた」という説に反論し、「言葉以前に踊りや音楽で感情を共有する、すなわち”共感”を通じて意思疎通をはかっていた」という説を展開。

 

「共感」は「相手を思いやる」ことで育まれ、これが社会の礎になったといいます。

 

著者の主張の展開は以下のような感じです。

 

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狩猟・採集時代は、人々は獲物をもとめて渡り歩く「遊動」生活を送っていて、取った獲物を平等に分けるのが習慣で、この平等な分配が社会を支えていた。

 

それが農耕・飼育時代になると、成果を生む場所が固定される「定住」生活になるため、その成果を守る、あるいは自分たちの成果が足りないときに、他人の成果を奪う、という行動がうまれ、これが争いをうんでしまった。

 

思いやりの気持ちが「共感」の源泉だが、仲間を思いやる気持ちが強いあまりに、”敵”をつくりあげてしまい、これが争いを生んでいる。まさに「共感」の”暴走”である。

 

能力の違いで成果に差が生じて、それが不平等を生み出し、権力が生まれた。

 

人間は本来争うことを好まなかった生き物だった。

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昨今戦争や争いを当たり前のように見聞きしていると、人は元々そういうものだ、と思いがちですが、著者はその考えに対して明確に否定しています。

 

この主張はパッと見、平等主義、共産主義的な思想、と捉えられがちですが、著者は、ヒトに最も近い生物である類人猿(※)の1つ、ゴリラの研究者でもあり、生物学、自然科学的な視点で説を展開しているのが特徴。

 

(※)類人猿は生物学的分類でいうと、ヒト上科に属する生物で、現在はさらにテナガザル科とヒト科に分化されます。テナガザル科はテナガザル、フクロテナガザルなどが所属。ヒト科は、オランウータンが属するオランウータン亜科とヒト亜科に分化。ヒト亜科はさらにゴリラが属するゴリラ族とヒト族に分かれ、ヒト族はチンパンジー亜属、とヒト亜属にさらに分化されます。大型類人猿としては、オランウータン、ゴリラ、チンパンジーボノボがあげられます。

 

資本主義だ、社会主義だ、共産主義だ、宗教だ、といった思想的背景ではないので、ある意味安心して読むことができます(^^)

 

比較的時系列でヒトの発展をたどってきており、読みやすくまとまっています。第5章「戦争はなぜ生まれたのか」はなかなか興味深いです。

 

 

 

ヒトは、病気や事故、事件に巻き込まれない限り、生物学的に80年から90年生きることが可能です。その一生の送っていく間、自我に目覚め、好奇心に踊り、大きくなることを望み、やがて”相応”というところを感じ始め、自然な流れに身を任せていく、といった変化をたどっていくように思います。

 

著者が本書の中で「人間が恐ろしいのは、神の手を持つ願望があること」と述べています。ヒトの成長でいえば、「大きくなること」をまだ望んでいるようなフェーズと重なる気がします。

 

しかし、年齢を重ねていくと自分の体が思うようにいかなくなることを自覚し始め、それが”相応”を感じるきっかけになるような気がして、今の社会でいえば、戦争や自然環境の変化の大きさが、”思うようにいかなくなってきた”事柄と思うと、これも重なるところを感じます。

 

 

 

メタバースやChatGPTについても言及がされ、著者なりの見解も述べられています。

 

今後「社会」とどう向き合っていったらいいのか、を考える上で1つの視点を提供してくれる本だと感じました。

 

 

 

 

私的には「あいだ」という概念が、私が普段意識している「グレーゾーン」という考え方にとても近しい感覚を覚え、まさに「共感」を覚えました(^^)