トンガの海底火山が噴火して、トンガ始めアメリカや日本でも被害がでているようです。
被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。
さて、こういう大きなことが起こるとSNSはいろいろな賑わいをみせます。
いろいろな投稿がありましたが、ふと目に止まったのが「脱炭素運動は終わりだ」という類。
脱炭素運動の是非については脇に置いといて、この「脱炭素運動は終わりだ」と主張している人の論拠がまったくなく、印象だけでSNSで拡散していることに辟易しました。
## 人類が1年間に排出するCO2は37ギガトン。一回の噴火でそれを超えた可能性があると指摘されている。## (この方のSNSから引用)
可能性はどんなことでも言うことは可能です。
「明日富士山が噴火する可能性がある」
よく言葉尻をみれば断言はしていないのですが、さも事実のように受け取ってしまう人は少なくないと思われます。
ちなみに今回のトンガの噴火のCO2排出量についてはまだ発表はありません。(この人物がSNSに投稿した2021年1月17日段階)
火山が排出する二酸化炭素量については、2年前にForbesが記事を公開しています。
年間で陸上・海底火山が放出する二酸化炭素量は0.3〜0.4ギガトン
一方で2018年に人類が放出した二酸化炭素量は37ギガトン
過去100年では年間10ギガトン放出していたが、ここ数十年で急激に増加している。
(ギガトン:ギガは100万倍でトンは1000キログラム。道産子レースに出る馬は1トンくらいですから、1ギガトンは100万頭に相当します)
この人物は、これだけでなく事実と異なる投稿もしています。
## ピナツボ火山でも明らかなように、人類の何年分ものCO2が一気に放出されても大気のCO2濃度は増加しなかった。##
(同様にこの人物のSNS投稿から引用)
ピナツボ火山での二酸化炭素放出量は文献がでており、年間で0.05ギガトンとのこと。
(https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2013/2013_10_0023.pdfの6ページ目に記載)
アメリカの地質調査所によるまとめだそうです。
私はこの調査所の文献を直接見ていないので、事実確認はできておりませんが、少なくとも日本気象学会における発表論文であることから、信憑性は期待できそうです。
どのデータあるいは発表を根拠に言っているのか、この人物の投稿は首をかしげざるをえません。
脱炭素運動に抵抗をすること自体は、それなりの根拠をもって主張するのであれば健全な議論につながると思うのでむしろ歓迎ですが、このように事実と異なることを平気で吹聴されるのは、いい気分がしません。
もちろん個人の気持ちを発する権利は我が国では保証されています。
我々の多くは一次情報に触れられることはまずない(多くの人は政治家の気持ちを直接聞いたりできないし、二酸化炭素の量を測定することもできない)ので、それなりにその世界で著名な人の言葉を信じざるを得ない面があります。
この人物は自らマスメディアに露出してそれなりの影響力を持っている人でもあるので、SNSの投稿でも少なくない人が影響を受けていると思われます。
多くの人間が社会を形成している中で、こういう人は存在するのはやむを得ないところはあるかもしれません。
だからといって、発言に対しての規制強化は人々の生活を拘束することに繋がりかねず、結局は自分で情報の取捨を判断しなくてはならない、というところに落ち着く気がします。
どの段階で目の前の情報を信用する判断をするかは、人それぞれ。
先程も申したように、情報確認してもできることできないことありますから。
ただ、「〇〇だ!」と断言していたり、「〇〇に違いない!」と強く牽引する空気を感じたら、「なぜだろう」といったん冷静にながめてみるといいかな、と。
理由がみつからなかった「怪しいかも」くらいに思うだけで、情報に振り回されることが減るかもしれません。
今回の記事も「え?ほんと?」と思って調べてみて知ったことでした。
以前テレビで見かけたときは、ユニークな発言をするな、と思っていましたが、今回のこのSNSの投稿をみて、この人の発言は信用度が低い、と自分の中では片付けました。
過去にもデマが流れ大きな影響を与えたことはありました。
(関東大震災のときの朝鮮の人達に対するデマなど)
今は簡単に情報を入手できる分、情報の流れは多くて早いから、情報の取捨は難しいですね。
今では写真を合成してさも事実のように流すフェークニュースも横行しているので、なおさら・・・
近所のドラッグストアポイントアップカレンダー(笑)
これなら一次情報で間違いないでしょ!