今回の読書会の課題図書はこちら。
「サラ金」っていい印象ないですよね、私もです。
この本はサラ金がどのように生まれて、どのような環境の中でどのように変化をして、そして姿を変えていったか、その変遷を客観的な視点でまとめたものです。
著者のあとがきによると、あえて当事者へのインタビューなどをせず、新聞、書籍、文献などから情報をひろって中立的な立ち位置でまとめた、とのことです。
もともとは素人高利貸から始まり、団地金融、消費者金融、サラリーマン金融を経て、最終的には精算あるいは銀行の傘下にはいることで消滅したサラ金会社。
過酷な取り立てと、それによる夜逃げや自殺といったことで多くの人が人生を壊されたというイメージがつきもののサラ金。
それをあえて「ひどい」という表現を使うと、なぜそんな「ひどい」事業が発展したのか、という視点に立つと、今まで自分が立ったことのなかった立ち位置からの視界がひらけてくる、そんな本です。
どれも一時代たくさんCMも見ましたし、経団連に加入できるくらいの大手”一流”企業の仲間入りをしていたブランドです。
何もないところから利益は生まれません。
これらは事業をしていたわけで、事業ということはお客がいるわけで、お客がいるということはニーズがあった、ということでもあるんです。
どんなニーズだったのか、そしてそのニーズはどういう変化をしてきたのか・・・
さらにそのニーズを生む社会的背景、環境はどうだったのか、どう変化してきたのか・・・
給与水準と物価のトレンド
必要な時に資金調達する選択肢
日本企業のサクセスコースと家庭における役割意識
あえてサラ金に出資する金融機関の思惑
政治献金を受け取っている政治家の思惑
創業者の人生観
人間の持つ欲望、見栄
人種・男女・地域などの差別意識
いろいろな要素がからんでサラ金は生まれ育ち、多くの人を巻き込み、そして形の上では消えていきました。
「何が悪いから」と簡単にこの業界のことを語ることは難しいことを感じました。
ここを学ぶことは今の社会現象について自分なりの見方をもつ視点を持てる気がします。
たとえば「オレオレ詐欺」。
この本では闇金から流れてきた人たちがあたらしい”ビジネス”として育てたのではないか、という可能性を示唆しています。
多重債務者により貸し倒れの増加で経営に影響が出てきたサラ金各社が、多重債務者への融資を絞ったとき、あぶれた多重債務者が頼ったのが闇金。
サラ金は新しく法律で設定された上限利息を遵守しなくてはいけないのですが、闇金は文字通り、「やみ」なのでそんなの無視。
そして反社会団体が深く関わっていたこともあり法的に問題がある行動を指摘されていました。
しかし改正貸金業法により闇金へも規制が強化され、闇金時代も厳しくなります。
そこでそれらが廃業したのではなく、オレオレ詐欺に転業したのではないか、という見方です。
そう考える根拠などは本書にかかれていますので、ここでは控えます(^^)
サラ金、という一つの事業を通じて昭和から現代に至る社会環境の一端をみるような思いでした。
余談ですが、年利100%超えだった上限利息率の改正に中心的に動いていたメンバーとして名前がでていたのが、日弁連元会長で東京都知事に何度か出馬している宇都宮健児氏と、当時金融庁にいて後に法務大臣となる森雅子氏でした。
私の勉強不足でいまさらこの人達の活動をこの本で知ることになったのも、一つの学びでした。