夢枕獏の小説を漫画化した全5巻。
昨年末山好きの友人がこれを読んだということをシェアしてくれたので、正月休みに読もうと大人買い。(でも中古品で安くあげた^^;;)
風呂に浸かりながらの至福のまんがタイムを堪能しました(^^)
登山カメラマン深町は、45歳以上のメンバーで構成されるエベレスト登山隊に参加するも、2人の滑落者を出して失敗に終わり、メンバーとは別れてカトマンズに残ります。
そこでふらっと入った雑貨屋で古いカメラを見つけたのですが、それがエベレスト登山の謎と言われている登山家ジョージ・マロリーのものと見て購入するのですが、滞在先のホテルで盗まれてしまいます。
するとそのカメラはピカール・サン(毒蛇)と呼ばれている日本人が持っていたものの盗難品であったことが判明。
このピカール・サンこそ、日本で数々の登攀記録を出しながらヒマラヤの事故以来姿を消していた伝説の登山家羽生丈二でした。
深町はそれからカメラと羽生の謎に魅せられ追っていきます。
ここから先はネタバレになるので、読んでからのお楽しみ。
この小説は実在の人物と架空の人物が混在しているフィクションです。
実在の人物といえば、登山家ジョージ・マロリー。
1920年代にエベレスト登山を目指した登山家ですが、頂上付近で行方不明になり、75年後の1999年に遺体が発見されるも、世界初の頂上に到達したのかどうか未だに謎とされています。
「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」と問われて「そこにエベレストがあるから(Because it's there. )」と答えたという逸話でも有名です。
(日本語では「そこに山があるから」と誤訳されて流布されたようですね)
この小説はその謎が一つの柱となっています。
後は架空の人物ですが、モデルが存在しています。
伝説のクライマー羽生丈二は、実在した登山家森田勝をモデルにしたと言われています。
森田勝は1960年代から70年代にかけて活躍した登山家で、1980年にグランド・ジョラスに挑戦したものの遭難して命を落としました。
彼についての詳細はWikipediaなどでみていただくとその人物像が浮かんできます。
もうひとりは長谷 常雄で、実在した登山家長谷川恒男をモデルにした人物です。
長谷川恒男は、森田勝のライバルで世界で初めてアルプス三大北壁の冬期単独登攀を成功させたこれもまた伝説の登山家です。
1991年に雪崩にあって遭難死しています。
日本人の登山家といえて、日本人初のエベレスト登頂を果たし、マッキンリーで遭難した植村直己、80歳でエベレスト登頂した三浦雄一郎、女性初のエベレストと七大陸最高峰登頂をした田部井淳子、最近では単独無酸素にこだわりエベレストからインターネット中継をするなどユニークな活動をしていた栗城史多(2018年遭難死)らくらいしか私は知らなかったです^^;;
この小説は山にとりつかれた羽生という男と、羽生にとりつかれた深町というカメラマンの純粋すぎてどうしようもない生き様が魅力だと思います。
この本をシェアしてくれた友人は、以前「北アルプスに登るならぜひこれを読もう」と「岳」という漫画を勧めてくれ、これも全18巻大人買いして読みました。
先日も実家に帰ったとき久しぶりに読みましたが、これも名作ですね。
山の美しさと怖さを描きながら、山の申し子のような三歩(さんぽ)という主人公の純粋さにのめり込みます。
2011年、東日本大震災で被災した事業所の立て直しでふらふらだったところ、先の友人が「一緒に山にいきましょう」と誘ってくれたのがきっかけ。
初めての登山で、しかもいきなり3190メートルという高さできつかったけど、頂上に立ったときの爽快感は、それまで事業所の立て直しで精魂尽きて乾いたスポンジのようでしたが、そこに山の湧水がたっぷりしみこんできたような感じだったのを覚えています。
山を登った経験はまだまだ少ないですが、それ以来遠くからでも山を見るのが好きになっていました。
昨年秋の電車の旅でも山が見えてくるとずっと眺めていたように思います。
低い山でも森の中で鳥や清流の音に耳をかたむけてじっとしているだけで、心洗われる気持ちが味わえますので、ちょっと疲れた時に近くの山にハイキングもいいものです。