サイモン・ウィンチェスターによるノンフィクション『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話(英語版)』原作の実話に基づいた映画です。
2019年制作2時間ちょっとのアメリカ映画です。
メル・ギブソンとショーン・ペンの共演という豪華キャスティング。
(画像:Netflixから引用)
経済的理由で14歳で学校をやめたけど独学でラテン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語の知識を身に付けたジェームズ・マレー(メル・ギブソン)が招かれ、オクスフォードが行う「歴史的原理にもとづく新英語辞典」の編纂の主任に抜擢されます。
膨大な量の情報から歴史的つながりをみつけていく作業は途方もなく、マレーのチームは進捗がかなり厳しい状況に追い込まれます。
自分たちではとても情報を集められない、ということで広く本を読む人たちに協力をもとめるビラを本に挟んで出版してもらいます。
一方軍医時代のトラウマで心を病み、人違いで男を殺してしまったウィリアム・マイナー(ショーン・ペン)。
精神鑑定で疾患があると認定されたため、精神病院に収監されますが、官吏からもらった本に挟まれていたマレーのビラを手にします。
ウィリアムはとてつもない才能を発揮し、たくさんの文献を探し当てジェームズにその情報を提供します。
ジェームズの仕事はウィリアムという協力な助っ人の登場で苦境を脱しやっと軌道に乗り始めました。
しかし物語はそう簡単にはいきません。
ジェームズ、ウィリアム、ウィリアムに夫を目の前で殺された未亡人イライザ、ウィリアム担当の官吏マンシー、ジェームズの妻エイダ、ウィリアムを収監している精神病院の委員長リチャード、ジェームズの良き理解者フレデリック、オクスフォードの教授面々・・・
いろいろな人物がいろいろと存在感をもってこの物語を色づけています。
あのマッドマックスやリーサルウエポンでFワード連発しながら暴れまくったメル・ギブソンが天才言語学者の役をしっかり演じきっているのは驚きです。
そしてショーン・ペン!
やはりこの人の存在感は半端ない!(^^)
この人の場合、演技なのか地なのか区別がつかない(笑)
狂気じみた役柄はショーン・ペン、ジョー・ペシ、アンソニー・ホプキンスが私の中で3大巨匠。
話がずれました^^;;
舞台は、ジェームズがオクスフォードに招かれる1879年あたりのイングランドです。
メル・ギブソン演じるジェームズはスコットランド人ですが、メル・ギブソンはオーストラリア出身で、自身のもっているアクセントとかかなり特訓したんだろうなぁ、と思います。
映画はアメリカ映画ですが、役者のセリフはイギリス発音でした。(多分・・・)
ショーン・ペン演じるウィリアムはアメリカ軍の軍医という設定なのでアメリカ英語です。
この映画で私が感じたのは、「感受性」。
ウィリアムは自分が襲われるという恐怖観念から誤って人を殺してしまうのですが、それまで「人に殺される」ことを恐れていたのが、「人を殺してしまったこと」、そして「自分が大切にしなければならない人にとって大切なものを奪ってしまったこと」の罪に苦しみます。
「感情」は人がもつ大きな特徴の一つと言われています。
その「感情」によって人は繋がりをもち、そして苦しみを知ります。
普段社会の中で存在するために、ときに人は感情を抑えることを強いられます。
また、自然と身についていることでしょう。
ウィリアムはその感情を抑えられず、自分を痛めることで苦痛から逃れようとします。
ここに、ただの「狂人」と見てはいけないと問いかけるもうひとりの自分がいます。
自分には受け止められる器はないけど、せめて少しでもわかることができたら、と思います。
ウィリアムの感情の叫びとそれを受け止めるジェームズと理解者たち。
見ごたえのある映画でした。
小説も気になったのでAmazonでポチってみました。