今回読んだ本はこちら、「銀河鉄道の父」。
先日読書会の課題図書だった「家康、江戸を建てる」と同じ著者です。
この本を読んだ時、私はこの人の作品面白そうなだ、と思って他の著作を調べてみたら、この銀河鉄道の父で2018年に直木賞を受賞したらしく、あまりそういった受賞作品というものを読んでいなかったので、図書館で借りることにしました。
新書で3センチも厚みがある約400ページの本。
持ち運びはちょっと大変でしたが^^;;電車車内でだいぶ集中して読むことができました。
銀河鉄道といえば・・・ゴダイゴ・・・それは我々の世代で若い世代だとExileでしょうか(笑)
本の好きな方なら宮沢賢治と即答だと思います。
そうです、この本は宮沢賢治が生まれて亡くなるまでの一生を綴った本です。
ただ主人公は宮沢賢治ではありません。その父宮沢政次郎です。
宮沢賢治の一生という時間幅ではあるのですが、この物語の視点は父政次郎であることがユニークなところです。
政次郎は明治の男で、我々からすると頑固親父のイメージがありますが、政次郎の父は江戸時代の生まれであり、「明治」そして「大正」は”新しい”時代でもありました。
小学校で成績優秀だった政次郎は、家業の質屋には「学問はいらない」という政次郎の父喜助の方針で中学に行かず、父の仕事を引き継ぎます。
そんな政次郎に初めてできた子供が賢治です。
政次郎は自分でも驚くくらい、この息子を溺愛していることに気づき、「これが父親というものなのか」とまるでひとごとのように自分を知ることになります。
それまでのしきたり、子供への愛情、新しい時代の流れなど、さまざまな潮流に揉まれながら政次郎は悩み、耐え、試行錯誤し、ときは冒険をします。
そんな政次郎の”人間臭さ”がこの本の一番の面白みです。
できごとは当時宮沢賢治およびその周辺であった実際のできごとに沿っているため、あたかも伝記のように感じられる臨場感があり、小説なのか史実なのかわからなくなります(^^)
明治の男ではありますが、柔軟な思考で自分の気持ちと正直に向き合おうとする政次郎の姿が、いろいろと自分のこれまでの生き方と照らし合わせるところがあり、ひとごとではない気持ちで読むことができました。