今回の読書はこちら。シリーズ7部作の3部目です。
今回も楽しく読むことができました。
3冊めの構成は
・プロローグ「王さまのみみはロバのみみ」(ポプラ社)
・ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」(集英社文庫)
・「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」
・エピローグ「王さまのみみはロバのみみ」(ポプラ社)
となっています。
それぞれのタイトルに出てくる古書のうんちくやトリビアが興味深い内容であることはこれまで同様、期待を裏切らない楽しさがあり、一方で古本屋店主栞子さんにまつわるミステリーな部分が少しずつ明らかになってくる、という展開の楽しみもあります。
プロローグとエピローグでは、栞子さんの妹、篠川文香が語っています。プロローグがこれからの3作品の伏線を引いていて、エピローグでは「やはりそうか」というちょっとした種明かしが見られます。
面白い構成です(^^)
このシリーズは話が展開していくに従って少しずつ登場人物が増えていきます。一話ずつ完結するのですが、ふと後のストーリーで顔を出したりするんです。
「ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」(集英社文庫)」では、栞子の幼馴染で滝野蓮杖(たきのれんじょう)という男性と、ヒトリ書房という古本屋の井上太一郎という偏屈な男がこれからも登場しそうな予感のする新しい登場人物です。
滝野蓮杖の妹リュウが栞子と同級生で仲がいいらしく、滝野蓮杖も滝野書店を継いでいて本はとても詳しい。
一方井上太一郎は、栞子の母親である篠川智恵子にかなり悪い心象を持っているようで、この栞子に対してもかなり冷たい態度をとります。
古書会館で起きた事件(作品では”事故”と表現している)をきっかけに「たんぽぽ娘」という本を通じて人間ドラマを栞子が解き明かします。
2つ目の作品「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」は、本の名前になっていません。
最終的には本の名前が出てくるのですが、その本がどんな本だったかを探り当てるお話なので、タイトルにはネタバレになることから出ていません。
ここではビブリア古書堂の事件手帖1の第三話に登場した坂口夫妻が再び登場します。
奥さんの坂口しのぶが「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」を探してほしいと相談してきたのですが、その調査を進めていくと坂口しのぶの家族関係があぶりだされてきて、そして意外な事実が判明するという展開です。
3つ目の作品「宮澤賢治「春と修羅」」では、栞子の両親とも本の売買で付き合いのあった顧客から「春と修羅」が盗まれたが犯人の見当はついているので、取り戻してほしい、という依頼が栞子のところにきます。
宮澤賢治は多くの日本人が知っている作家の一人ですが、存命中はあまり本も売れず不遇でした。有名になったのは亡くなった後なんですね。
存命中に発行した本も限られており、童話集の「注文の多い料理店」とこの「春の修羅」だけなんだとか。しかもほとんど売れず宮澤賢治本人がだいぶ引き取ったそうです。
有名な「銀河鉄道の夜」は没後刊行された全集に収録されたもので存命中は発表さえされていなかったらしいです。
そんなトリビアに「へぇ〜」と思いながら読みすすめるのですが、話はこちらも意外な展開をみせます。そして最後に栞子は両親について衝撃の話を耳にしてしまいます。
それを受けてのエピローグがまたなかなか絶妙で、第4巻を早く読みたいという衝動を抑えることができません^^;;
楽しみです。