今月の課題図書はこちら。
プロローグ、エピローグに加えて20の章で構成された、為政者による暴挙に負けないための指針です。
ここでその”暴政”をしている、としてあげられている為政者は
・ヒトラー
・プーチン
・トランプ(文中では”現大統領”として表現されています)
スターリンの名前も出てきますが、主にこの3人が”暴政”をした(している)人物として取り上げられています。
一方でその暴政に立ち向かった人物としてポーランドのワレサ氏、旧チェコスロバキアのハヴェル氏が登場します。私の年代では1980年〜1990年にかけて活躍した人物たちなのでとても懐かしい(^^)
作者のティモシー・スナイダーは歴史学者ですが、現在の為政者が中心になっているのは興味深いです。
読書会の中でも「ここに書いてあることは、ごく当たり前のことばかり」という指摘があるくらい、特別な内容ではないかもしれません。
ですが、ここに書いてあることを意識できているのか、自らが行動に移せているか、というとそうとも言い切れない面がいろいろあることに気付かされます。
人によって意見は異なると思いますが、日本という国は戦後になってから”暴政”と言われるほどのひどい状況になっていなかったことが、あまり意識をしないで生活ができてきた背景の一つではないか、と感じます。
この感覚は立場によって異を唱える方も少なくない、と思いますが、全く日本に無関係な第三国の立場から見ると、ヒトラー、プーチン、トランプ、さらに歴史をもどせばスターリン、ムッソリーニ、日本で言えば戦前の陸軍主体の政治体制を鑑みると、今の日本はかなり”静政”のように見えるのではないか、と感じています。
政治に対して無関心な人たちが多いことは、投票率の低さにも現れていますし、政治が普段の会話であまりされないことにも現れています。
いろいろな文句は毎日のようにでます。
でも「不満だからこの政治を倒そう」というほどの動きもないのも実態です。
動くほどのことでもない、と思えば優先順位は必然的に下がります。
ヒトラー政治、プーチン政治、スターリン政治など”暴政”の下での生活を経験すると、政治への関心は必然的に強くならざるをえないかもしれません。
ドイツの首相として評価の高かったメルケル首相は東ドイツの出身。秘密警察が暗躍していた社会で育ったからこそ、理想とのギャップが顕在化し、政治家としての意欲を支える原動力の1つになったのかもしれない、と勝手な推定をしています。
我々は体験から得る知見をベースに価値観を形成していきますが、体験だけでは補えない知見がたくさんあります。
著者はそのために「インターネットから離れて」「本を読む」ことを強く推奨しています。
意見や見解、思想の違いはあれど、「本」は時間をかけて集めた情報をまとめ活字として後世に残るものに対し、インターネット情報は瞬間的に発生し流れて消えていくものが多いことから、その”質”という点で劣るものが少なくありません。
体験で得られない学びの一つが、「歴史に学ぶ」だと思います。
学ぶためには、「思考をとめない」ことが肝要。言われたことをそのまま受け入れるのではなく、「なぜだろう」「ほんとうかな」そんな自問をもって目の前にある情報の奥にある背景や意図を探るトレーニングもまた必要です。
この本は我々が政治について「学ぶべき」視点がコンパクトにまとめられています。
こういう本にこれからも出会いたいと思いました。