父が手術&治療の他にも、ウイルス感染や胆管炎などで入退院を繰り返し、また認知的な現象がでるかもしれない、という状態になったことで家族の間であがった課題が「保有不動産」の扱い。
もし父が施設などに入ることになるようなら、この不動産を処分する必要がでてきそうだからです。
この不動産は両親が共同名義で保有。そのため、不動産の処分には父の意思が反映されること、そして届け出など手続きも本人がやることが原則。
もし父が動けない、判断ができない状態になると保有不動産を処分することができません。そこで父に代わってどんな対応がとれるのか、自分なりに調べてみました。
考えられる選択肢
生前贈与
代理人契約
家族信託
成年後見人
生前贈与
一番手っ取り早いのは生前贈与をしてしまうこと。権利が相続されますので父の状態に関わらず対処できます。
しかしこの場合は税金がいろいろとかかります。
・贈与税
・不動産取得税
・登録免許税
贈与税
「その年の1月1日において20歳以上の人が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に用いる(令和4年4月1日以後の贈与については18歳以上)」特別贈与税だと税率が少し低くなり、控除額も大きくなりますが、これに該当しない一般贈与だと以下のような税率になります。
(画像:https://souzoku-pro.info/columns/seizenzouyo/506/より引用)
基礎控除額は110万円です。
贈与税額=(評価額-110万円)×税率-控除額
で計算されます。
例えば1,000万円の不動産の場合、
(1,000万円ー110万円) x 40% ー 125万円 = 231万円
が贈与税として請求されます。なかなか痛い(^^)
ただし、条件によってはこれが安くなるケースがあります。
・相続時精算課税制度
・暦年贈与
詳細はこちらをご覧いただくとわかりやすいです。
贈与される側は、不動産を取得するために不動産取得税と登記内容を変更するため(名義変更)登録免許税がさらにかかります。(相続の場合はこれらはかかりません)
不動産取得税は、固定資産評価額の4%です。
登録免許税は、生前贈与の場合は固定審査評価額の2%(相続の場合は0.4%)
我が家の場合は今住んでいる家ではないことや相続が配偶者ということもあり、贈与税が大きくて、選択肢とはなりませんでした。
代理人契約
文字通り、「父の代理」になる権利「代理権」を持つことです。代理をお願いする父(委任者)と代理を受ける私(あるいは母、親族など:代理人)との間で、合意をした上で委任状を締結することで成立します。
万が一家族間で揉める恐れがある場合は、公証役場で公証証書を作成してもらうといいです。この場合、委任者、代理人が揃って公証役場に向かう必要があり、公証証書を作成する費用が7,000円(2023年4月現在)発生します。
それがかなわない場合は、司法書士にお願いして手続きしてもらう選択肢もあります。この場合は当然のことながら司法書士への報酬を支払うことになります。案件にもよりますが、10万円前後かかると思われます。
代理人についてよくまとまっていたのがこちらのサイト。
私はここにあった雛形を使って自分で委任状を作成しました。
家族信託
自身の財産(不動産だけでなく金銭なども扱える)の管理を信用できる家族に委託する制度です。
代理人に委任すると、「あとはよろしく」なのですが、この家族信託の場合は、信託を受けた受託者が信託を委任した委託者に報告する義務もあり、委託者が成り行きを見守ることができるというところが、代理人とは異なるところかもしれません。
家族信託についてよくまとまっていたのがこちらのサイト。
不動産についての信託についてはこちらのサイトでより詳しく記載されています。
legalestate-kazokushintaku.com
不動産の場合、信託されたらそのことを登記しなくてはならない(義務)なので、信託登記という手続きが必要です。同時に義務ではないのですが所有者名義変更の手続きも行うのが通例なので、手続きが代理人に比べて多くなります。
・信託契約(委託する人と受託する人との間で取り交わされる)
・不動産の信託登記(義務)
・所有者名義変更
なので、費用と手間が代理人対応に比べるとかかります。
なお、所有者名義変更には委託者と受託者が揃って手続きをすることが原則ですが、委託者からの委任状があれば受託者のみでも手続きができるそうです。法務局に直接問合せて確認しました。
成年後見人制度
委託人が受託人にある権利を任せるという点は共通なのですが、裁判所が認定や手続きに関わってきますので、法的な意味合いがとても強い制度です。
良くも悪しくも、何か動きを取るときには裁判所の承認が必要となりますので、受託人といえども勝手な行動はとれません。
家族内で揉め事が起こりそうな恐れがあったり、家族といえども信用できない面がある場合は、裁判所という公の期間を頼って財産管理をするということができます。
厚生労働省がその制度についてまとめたものがこちら。
今回私達の場合は、家族同士が円満に話し合いができていること、手続きはできるだけ簡略化したいこと、父が家族を信用しているだろうと思われることから、この制度は候補にあげておらず、あまり勉強はしませんでした。
選択
なんといっても「父がもっている権利を預ける」ということなので、父の意思に則ることが大前提となりますので、見舞いに行った時に「相談があるんだ」と父に直接訊いてみました。
その時の父はとても穏やかで認知能力も通常と変わらない(認知能力が落ちていたらそもそもこの手続は無効になります)状態だったので、まずは一安心。
実は、自分がこのような状況になり保有不動産をどうすべきか懸念していたそうです。
父としては母にすべてを託したい、ということだったので「その意志に従って対応するよ」と約束し私に代理人を委任してもらうことに合意してもらえました。
父には「こういう話をしてくれて助かったよ。大きな心配事が1つ解決した」と笑顔で言ってくれて、私も大役が果たせた気持ちでした。(^^)
事前準備で、いろいろな可能性を考えて、代理人委任状だけでなく、信託契約や不動産登記用の委任状を用意したり、どうやって父に話をもちかけようか展開を考えたり、結構時間と脳を使いましたね(だはは、情けない^^;;)
終わった後母と妹に報告し、我々家族にとっておそらく一番いい方向になったことで安堵感を分かち合ったらドッと疲れが出て、帰宅後は仕事するつもりだったのですが、食事して寝てしまいました。。。