今回の課題図書はこちら。
前回「発酵文化人類学」が課題図書でしたが、共通項もあり、ちょっとした「食文化」リレーになりました。
著者は本書を見ると、食べること飲むことが大好きな方でしかも知識も豊富でいらっしゃるご様子。そしてご職業が地質学のプロ。
世界各地に広がる美味しい食や飲み物がなぜ生まれたのかを、専門分野である地質学という観点から紐解いて解説しているのが本書になります。
その視点や流れは、NHKで放映されているブラタモリの構成にとてもよく似ています(^^)
「今ここで〇〇が観光の目玉になっています」
「これには実は特有の地形が関係しています」
「今から〇〇万年前に起きた大地の動き(地殻変動、火山活動、隆起、沈降など)がこのような地形をつくりました」
みたいな流れ(^^)
ブラタモリを楽しんでいらっしゃる方は興味持てる内容ではないかと思います。
一方で、ブラタモリほどわかりやすいレベルまで砕いていないので、ある程度の知識が必要そうだな、とも感じました。
花崗岩、玄武岩、安山岩、チャートなどそういった石がどういうものなのかを予備知識で持っていないと、読み進めるのがちょっと苦労しそうです。
ブラタモリではタモさんが、解説する前にずばずば当ててしまうのですが、解説の草彅くんが丁寧にどういうことなのかをちゃんと説明してくれるので、知識がなくても「なるほど〜」となるのですが、本書ではそこまでは親切ではない(笑)
それでも、普段の食事にかかわるところから、地球の成り立ちなどに思いを寄せるのはなかなかオツなものです。
日本の豆腐は絹豆腐に代表されるように、比較的柔らかいものが多いのに対し、中国や沖縄、日本の一部では硬い豆腐が主流なのは、硬水や軟水かという水の質に影響しているとのこと。
硬水と軟水の違いは、雨が地面に落ちてから川に出てくるまでの地中の質に影響をうける。
その地中にミネラルが多く含まれていると硬水の方向になるし、地中に水が滞在している時間が長ければその影響の受け方も大きい、という。
日本はマグマが冷えて固まった花崗岩が多く、水の浸透性がいい上に、急峻な山から水が流れてくるため地中にとどまっている時間が短い(数年から数十年)ので、ミネラル分はあるにしてもその量は多くなく軟水となる傾向にあります。
一方で硬水が多いヨーロッパなどはミネラルがより豊富な石灰岩で構成されているうえに起伏がなく地中に水がとどまっている時間が長い(数万年にも及ぶこともあるらしい)のでたっぷりミネラルが含まれる傾向にあるそう。
この水の違いは豆腐にとどまらず、お酒類も同様。日本酒、ワイン、ウィスキーなど、その地域でだからこそ生まれた味があるのは、こういった地質的な背景を知っていると世界が広がっていきます。
食に関わる話なので、前回の課題図書の発酵に関わる話も紹介されていました。
読みやすさという観点ではやはり前回の小倉ヒラク氏の文章の方がかなり読みやすい(^^)
「わかりやすく言うと・・・」
「今の世界に例えると・・・」
「ざっくりいうと・・・」
と噛み砕いてくれているからでしょうね。
この本でその流れをいれると文章がおそらく2倍に膨れ上がると思います^^;;
地質学の観点に立つと、突然時間軸がぐ〜んと拡がります。
日本がアジアの大陸から分離したのは約3,000万年前と言われています。
日本海はそれから生まれたわけですし、2,100万年前くらいは今の西日本はほぼ陸地で瀬戸内海はなかったのに対し、東北方面はほぼ海水面下にあったといいます。
伊豆半島が日本列島と激突して半島となったのは約60万年前。
そして約7万年前くらいに北方からマンモス、ヒグマなどが、南方からナンマンゾウ、ツキノワグマなどがやってきたということなので、その段階までは大陸と地続きだったんですね。
一方で隕石が激突して恐竜が滅んだというのが、約6,600万年前。
日本列島が生まれるはるか前に恐竜の世界は終わっていました。
そんな恐竜が活躍していたのは、中生代と言われる約2億5千万年前から約6,600万年前までの間の約2億年弱の期間。
いや〜、壮大過ぎる(笑)
小学生の頃から天文に興味を持っていたので、中学時代は地学の道に行きたいと思っていたのですが、岩石を覚えるのに嫌気がさして断念した覚えがあります^^;;
当時の理科は物理、化学、生物、地学と4つあったのですが、生物と地学は覚えることが多かったんですよね。物理と化学は覚えることは案外少なく、理詰めで理解できることが多かったので、結局理科の選択は物理、化学と典型的な理系の選択科目になってしまいました。
社会人になって技術者としてやっていたころは物理、化学の専門性が活かされましたが、今は昔は苦手な”覚える”科目だった、歴史や地質学などに興味をもつようになりました。
歴史は各分野面白さがありますが、特に縄文時代や石器時代、さらに恐竜のいた中世代といった、資料がなくて発見があるたびに歴史がかわりそうな時代は特に興味津々です。