今回の課題図書はこちら。
帯にもありますが、「なぜインドカレー店は日本のどこにでもあるのか?」という何気ない疑問から、ネパールという国の国情、ネパール人の気質など文化人類学的な領域に踏み込んだ興味深い本です。
ここで使われている「インネパ」ということば。「インド」と「ネパール」をくっつけた造語です。
元々は「ネパール人が経営するインドカレーのお店」を指していたようです。
そういえば、我々が普段目にする「インドカレー」のお店って、ネパール人が運営していることが多い。
看板も「インドカレー」と表示しているものもあれば「インド・ネパール料理」と表示しているところもある。
そういえば、カレー屋で「モモ」という大きな小籠包のような食べ物がありますが、これはネパールの料理らしい。
家の近くにあるインドカレーのお店なんて、居酒屋ででてきそうなつまみもおいてある(笑)
でも大抵は、バターチキンカレー、タンドリーチキン、ナンがあって、カレー&ナン&サラダの組み合わせのランチメニューがある、という同じようなスタイルです。
確かにどこも似たような感じですね。
これがインド料理と思っていましたが、インド・ネパールをよく知っている著者からみると、本場の料理とはだいぶ異なるようです。
インド北部では「ターリー」という定食が多かったらしい。肉か野菜のスパイス煮込み、ダルという豆の煮込み、人参や大根などの野菜をスパイスでつけたアチャールでライスを食べるらしい。
パンもあるらしいけど、ナンではなくロティやチャパティが多かったらしい。
バターチキンカレー、タンドリーチキン、ナンは外国人向けレストランでしか見なかったという。
ネパール料理も、ダル、お米、アチャール、発酵させた高菜などの素朴な料理らしい。
ということは、我々が日本で食べている”インド料理”って本場とは違うもの?
本書でも書いていた例の通り「中国の人がアメリカにいってカルフォルニアロールを”寿司”だぜ!といって”寿司や”をひらいている」みたいな感覚なのかもしれません。
実際多くの”インド料理”のお店ででてくる料理は、かなり”日本人の好みに寄せた”メニューなんだそうです。
中国からきたラーメンや餃子
イタリアからきたパスタ
インドからきたカレー
パンから発展した菓子パン
輸入からたくさんの独自料理を開発してきた日本ですが、「インネパ」も実はまけていなかった。
ネパールという国の実情とネパール人の気質、日本の入管制度といったいろいろな状況が絡み合って、今の「インネパ」ワールドが生み出されてきたことを、本書では多くのレジェンド級のネパール人たちへの直接インタビューを通じて迫っている、なかなかおもしろい本でした。
この本の取材を通じて紹介されていたお店にちょっと言ってみたいな、と思い、備忘録かねてお店をリストしておきます。
1968年銀座で創業の老舗インド料理。今の日本のインド料理のスタイルを確立したそうです。
日本初のバターチキンカレーを出したお店。
名古屋地域に最初に根づいた老舗で40年以上働いているネパール人がいるらしい。
日本人が経営する、こちらも名古屋老舗。
こちらも麹町に構える老舗のインド料理。比較的現地の味に近いという評判。
こちらも古くから有名ですね。