今回の課題図書はこちら。
行旅死亡人。この本で初めて知った言葉です。
Wikipediaから引用すると以下のような説明になります。
# 行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは、日本において、行旅中死亡し引き取り手が存在しない死者を指す言葉で、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でもある。また、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者も行旅死亡人と見なす。 #
(以上Wikipediaから引用)
いわゆる「身元不明」の死者もこれに含まれるようですね。
本書は、孤独死した身元不明の女性が、実は現金3,400万円を残していて、しかも身元が全くわからない、という人物を、たまたま行旅死亡人データベースを覗いた共同通信社の記者が興味を持って調べていったら・・・という展開のノンフィクション作品です。
著者は2人の記者。
それぞれの立場で交互にナレーションをするように章が区切られています。
最初は小説かと思っていたのですが、途中で何枚もでてくる写真があまりにもリアルだったので、「本当の話みたいだ」と思って読んでいったら、現実の話でした(^^)
この本を読んで、どんなところが刺さるのか、人それぞれだと思います。
高齢者の孤独死に感じる人、大金を残していることや戸籍がないというミステリーさに関心を持つ人、終戦後からの昭和の時代に思いを寄せる人、自分のこれからの生き方を意識する人などなど。
私は、この亡くなった人(チヅコさんと呼ばれています)がどんな人生を送ってきたのか、そこになにか惹かれるものを感じました。
加工工場で事故にあい、手の指を失うという大怪我を負いながらも労災の受取を拒否した、とか、大事にもっていた男性の写真が、おそらく何十年も住んでいた部屋の契約者であり、チヅコさんの配偶者である可能性が高そうなのですが、まったくこの男性に関する情報がみつからなかった、とか、近所付き合いはほとんどなく、ほとんどの人が関わりをもっていなかった、とか、いろいろとミステリーな要素が多く、海外の工作員か、と最初は勘ぐっていました。
でもチヅコさんは広島の学校で育った日本人であることはほぼ確実であり、潜伏して地下活動をしている工作員とはちょっと様相が違います。
どんな思いで、どんなことを考えながら生きてきたのだろう。
何かをとても大事にしていたような気がするのですが、その大事な物ってどんなことだったのだろうか。
この本にかかれていることしかわからない読者には、知る由もないことではありますが、著者であるこの2人による取材と描写が、なにかそういうことを思わさせるように感じます。
チヅコさんは”くも膜下出血”で亡くなった可能性が高く、これまでの私の知識では、おそらく急に倒れてそのまま手に召されたと思われます。
突然訪れた死というものは、チヅコさんにとって幸せなことだったのだろうか。。。
他人の人生の一端を観ることで自分の人生について意識することがありますが、この本はそういう思いがでてくるような作品、というのが私個人の印象です。
本書の概要は著者本人たちによってネットでも紹介されていますので、ご参考まで。