48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読後感想〜後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ

 

今回読んだ本はこちら。

 

読書会以外で何を読もうか探していたところ、ノンフィクション系がいいなぁ、と思ってハヤカワNFあたりを探していたら目についたのがこの本でした。

 

著者ペーター・ヴォールレーベンはドイツで20年以上ラインラント=プファルツ州営林署で森林官として働いたのち、フリーランスで森林の管理をはじめたという経歴の持ち主。

 

家族で常に自然に接する環境におり、「樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声」という本がドイツで100万部を超えるベストセラーになったそうです。

 

本の構成は数ページのエッセイの集まりです。

 

なので途中でストーリーのつながりがわからなくなる、というような心配はいりません。

 

著者は長年の経験と体験で「動物にも感情がある」ととらえています。

 

生物学には否定する説も少なくないのですが、彼の場合は生物学的視点というよりは、「これらの動物たちの行動は”感情”がないと説明できないんじゃない?」という観察からの視点にたっているのが特徴です。

 

DNAに本能として刻まれた行動だけでなく、後天的に身につける感情面がたくさんある、というのです。

 

著者は自分の観察から彼なりの説を唱えていますが、生物学などにも精通していることがこの本を通じてわかります。

 

一つ内容をご紹介しましょう。

 

動物にも数を数える能力があるらしい、というエッセイ。

 

これは生物学でも指摘され始めているらしいです。

 

ある時著者が飼っているヤギ(著者は森林に住んでいることもあり、ヤギ、馬、イヌなど多くの動物を飼っている)たちへの餌やりを息子にやらせてみました。

 

息子はそれまでヤギに餌を与える時間を自分の都合で勝手に変えてしまいました。

 

息子は他の動物にも餌やりをやります。

 

なので、時間は自分の都合でコロコロ変わるのですが、ヤギの小屋に行くのは1日で農場を訪れる2回目のときが多くなりました。

 

ヤギはその息子が2回めに農場に現れるときだけ、メエメエと餌をねだりによってくるようになったんだとか。

 

これって、お腹が空いたという体内時計ではなく、息子が”2”回目にきたことに反応しているわけで、これはヤギが息子のきた回数を「数えて」いることではないか、という展開です。

 

このように日常の観察から、それぞれの動物は人間にしかないと思われている感情を持ち合わせているだろうという説を著者が紹介してくれています。

 

 

 

しかし著者は、実際に動物が感情をもっているかどうか、という事自体にそれほど固執はしていません。

 

動物に感情があるという前提を置くことで、動物たちがどういう気持でいるのかを我々が少し追体験できる、それにより動物や自然に対して慈しむ(いつくしむ)感情をモテるようになるというところを大切に思っているように感じます。

 

先日ご紹介した「暇と退屈の倫理学」において、ダニはダニなりの、ハチはハチなりの時空があって、時間と空間の感覚が我々とは全く異なるという視点を得ました。

 

ちょっと似ている視点だなぁ、と。

 

 

 

動物に感情があるという視点で接すると、動物たちがとても身近に感じられるようになりますね。

 

これまで多くの動植物を絶滅に追いやってきたホモサピエンスですが、こういう視点に立つことですこし自然界にたいして謙虚な気持ちになれるといいな、とささやかに感じます(^^)