今年最初の読書会の課題図書はこちら。著者の今井むつみ氏の著作は、2023年10月の読書会で取り上げた「言語の本質」(共著)に続き、2回目です。
前回同様、今回の本もとても内容が濃いものでした。
本書には「<探求人>になるために」という副題がついています。
本のカバーでも著者が「学びとはあくなき探求のプロセス」と定義しています。
著者はカバーで更に続けます。
”単なる知識の習得や積み重ねではなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出す、その発見と創造こそが本質である。”
ここでいう「知識」の定義にも注意が必要です。
そして本書の「はじめに」のあとに、なんと将棋界のレジェンド羽生善治九段が寄稿しているんです!
羽生九段は「天才」とも言われること少なからず。そして著者には「超一流の熟達者」の1人として紹介されています。
本書はこんな構成をしています。
第1章で「記憶力がいい、とはどういうことだろう」「知識とはなんだろう」という投げかけから始まります。
第2章で「子供が言語を覚える過程」に着目し、”学ぶ土台”について言及。
第3章で”スキーマ”という概念をとりあげ、「学ぶときの壁をどう乗り越えていくか」という過程を述べています。
第4章で「学び続けた先にある”熟達”」について言及し、”直観力”との関連性について触れています。
第5章で「熟達によって脳はどう変化するのか」と”脳”内に目を向けます。
第6章で「生きた知識」について語られます。
第7章で「超一流の達人」にどうやってなれるのか、天才ってどういうことなのか、について切り込みます。そのキーワードが”探求”です。
そして終章で「探求人を育てていく」環境について著者の問題提起、提案が述べられています。
ずばり、「天才」とは・・・「一流の達人」とは・・・「それは向上する努力をし続ける力を持っている人」というのが羽生九段の言葉。
遺伝的に特定の能力が生まれたときから備わっているわけではなく、自分の現在地を把握し、目指す姿をイメージして、ほどよい目標値を定め、その目標を達成するための努力をし続けること。
そこには”遊び”があり、自分の意志で行動し、楽しむことができ、それ自体が目的であることが必要。
大リーグの大谷翔平は、学生の頃から自分の目指すレベルをイメージして、そのために何が必要かをブレークダウンして、トレーニングを楽しみながらやっています。
将棋の藤井聡太は、小さい頃から詰将棋が大好きで、ひたすら将棋ばかりを楽しんでいたといいます。
元大リーガーのイチローは、子供の頃バッティングセンターで、プロのスピードをイメージさせるために、ボールを投げる機械のバネ力を強くしてもらい、打ち込んでいたと本書で紹介されています。
寝食忘れて、楽しみ続け、壁にあたったら一生懸命打開策を考えて創造して乗り切って、新しい壁にまた挑戦していく、こんなプロセスの繰り返しなんでしょうね。
思い起こせば自分が子供の時に、ちょっとばかしみんなよりできていたものって、小さい時から夢中になっていたことが関係しているように思えました。
私は幼稚園に入る前から父とキャッチボールとしていて、当時住んでいた社宅の壁に向かって毎日といっていいほど、プロ野球のピッチャーのマネをしながらボールを投げていました。小学校のころからずっとピッチャーをやっていたのは、その時に夢中になって遊んでいたからかもしれません。
また学研シリーズの「〇〇のひみつ」というシリーズものが大好きで、それこそ欄外の豆知識まで頭に入るくらい何度も何度も読み続けていたことがあり、今から思えばそれらが学校で学んだことの基礎になっていたかもしれません。
ただ私には、大きな目標や自分のレベルをちゃんと見定める力はなかったようで^^;;達人の領域には到底及ぶことはかないませんでした。
学校にいくようになって、「教わったことを身につける」と「大人に喜ばれる」ことを知って、「自分から探求する」ことをしなくなってしまったのかも。。。
今の自分の創造性の低さを思うと、なかなか残念です(笑)
会社をやめたときから「何か寝食を忘れて夢中になれることをみつけたい」と言い続けて(まだ見つかってないのですが)いたのは、能動的に探求し続けたいという気持ちなのかもしれません。
そんなふうに思うと、第一線で活躍している人、あるいは達人目指している人を、リスペクトできるし、何か応援したい気持ちにもなります。
本書を読むと、一流の人達に対する見方に、ちょっと広がりをもてるかもしれません(^^)