ゴールデンウイーク明け第1弾はマット・リドレー著の「繁栄」でした。
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ハヤカワ・ノンフィクション文庫で550ページの大作。
読書会時点では読了できていませんでした・・・
読書会が終わってからキャッチアップ(^^)
原文のタイトルは「The Rational Optimist」すなわち「合理的楽観主義者」である。
邦題の「繁栄」とどう結びつくのか。
自称「合理的楽観主義者」である著者マット・リドレーが
- 世の中「悪い悪い」と悲観論がのさばっているが実は明らかに良くなっている
- 明日が暗くするかに見える問題多くは今後も良い方向にむかっていく
- 人は「交換」と「分業」で“繁栄”をし、アイデアの交換=共有によってさらなる繁栄が到来する
と本書で主張しています。
2010年に単行本として出版され、2013年に文庫版になったものです。
文庫でさえも、終わりに63ページにわたる訳注が添付されているように、この著者は多くの文献やデータを元にしているのが驚き。
本書でも多くのデータが引用されており、分析した上での主張であることが伝わってきます。
私が上述した著者の主張以外に関心をいただいたのが2点ほど。
- エネルギー・資源政策の考え方
- 人は二極による緊張感で進化をしているかもしれない
です。
1点目は、表面的な結果にとらわれるのは危険だということ。
例えばエネルギー供給源。
太陽光、風力、水力など再生可能エネルギーへの転換が声高に言われていますが、エネルギーへの変換効率があがらない構造であること、インフラを引くために山林や農地、動植物を犠牲にしなければならないこと、アルコール燃料やバイオマス燃料に至っては食糧危機をもたらす恐れがあること、といった視点での考察、見解が我々の目や耳に簡単に届いてきません。
化石燃料を利用することでオゾン層が破壊され地球温暖化が進むと警告をならしている団体がいますが、実際にどれだけの温度上昇率なのか。
再生エネルギーだけで必要電力をまかなうためにはどれだけの土地を充当しなければならないのかという、需給バランスの検証。
例えばアメリカに住んでいる3億人に1人あたり1万ワットを水力発電だけで供給しようとした場合、全大陸の面積の3分の1以上の広さをもつ貯水池が必要らしいです。
単に「二酸化炭素を放出しないから」だけではなく、実際の影響度や代替案における懸念も同じ土俵で考えた上で意見をもたないと危険ですね。
2つ目は、この合理的楽観主義者と対極にいる悲観論者の両方の存在が必要であるということ。
楽観主義者と悲観論者のどちらが正しいという単純な話ではなく、ある視点からすれば一方に理があり、別の視点から見ればもう一方に理があることはよくあること。
だからこそ、双方の意見をぶつからせることで新しいポジションを見つけられる可能性が生まれ、それが人の発展につながったのではないかと感じさせられました。
与党と野党、総論と各論みたいなものでしょうか。
相反する二極の緊張関係が、第三の極を生み、それが新しい軸となって発展につながる、そんなイメージです。
これまでなんとなく「当たり前」的な捉え方をしていた事象が「ほんとうにそうか?」と問いかけられている、そんな気にさせられた本です。
今回時間がなくてかなり斜め読みしてしまったのですが、まとまった時間をつかって一気に読んでみたい本の1つです。
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)