久しぶりに吉村昭作品。
本のタイトルは「彰義隊」とありますが、伏見宮邦家親王の第9王子にして、明治天皇の義理の叔父にあたる、上野寛永寺貫主輪王寺宮、後の北白川宮能久親王が本書の主人公です。
吉村昭は本書が朝日新聞社から刊行された2005年にガンが発覚し、翌2006年に亡くなっています。
したがって、解説にも書かれていましたが本書が吉村昭最後の歴史小説となりました。
舞台は鳥羽伏見の戦いあたりから。
倒幕を目論む薩摩・長州連合軍が朝廷を味方につけることに成功し、幕府軍が”朝敵”とされてしまい、朝廷に刃向かう意思のない将軍徳川慶喜は、戦いの前線である大坂から江戸に逃げてしまいます。
その慶喜が、朝廷に抵抗の意思がないことを伝えるために助けを求めたのが、皇族出身で上野寛永寺貫主であった輪王寺宮でした。
輪王寺宮は、その後時代の大きな流れに翻弄されるように、元皇族で多くの大名が平伏するような立場でありながら、”朝敵”扱いされ濁水のなかを逃げて東北まで逃げ落ちていきます。
月並みな表現ですが、輪王寺宮の”波乱万丈”の人生がこの小説の大きな柱となっています。
そこには人間の奥底に潜む大きな感情のうねりがあり、幕府が朝廷との関係を強くするために画策した和宮降嫁というできごとが、実は裏で大きな影響を与えていたらしい。
歴史上の大きな出来事と、人間の感情のうねりとの結びつきが、よりこの時代のドラマ性を生み出しているようです。
それにしても、著者吉村昭はなぜ本書のタイトルを「彰義隊」としたのだろうか。
本書のあとがきに著者が「ためらうことなく」このタイトルをつけたと記しているが、それでもよくわからない^^;;
彰義隊の戦いは上野寛永寺であり、そこのトップだったから、ということなのかもしれないが・・・
ChatGPTに訊いてみたけど、その回答内容はやはり腑に落ちない(^^)
彰義隊が輪王寺宮の人生を狂わせたか、というと、たまたま上野の戦いで接点があったくらいで、それほどの影響があるとは感じられませんでした。
むしろ慶喜と和宮降嫁を工作した幕府の要人たち、そして輪王寺宮の前に立ちふさがる有栖川宮熾仁親王の方がよっぽど大きな影響を与えています。
輪王寺宮は元皇族でありながら唯一”朝敵”とされた人物でもありました。
そういう稀有な人物がいたことを、恥ずかしながらこの小説を通じて初めて知りました。
この時代、まだまだ知らないドラマがありそうです。
